タグ:小説レビュー ( 35 ) タグの人気記事

「イコン」

12月6日 今野敏「イコン 」★★★☆☆
1995年初版発行の小説です。2016年11月15日第一刷発行の文庫本を、図書館で借りて読みました。
イコンとは、アイコンの起源となったギリシャ語で、東方正教会で使われる宗教画の事です。イコンは現世と神の世界をつなぐ窓だと考えられていたんだそう。パソコンのアイコンは現世と機械の中にある別世界をつなぐ窓ということでしょうか・・・
1995年なので、パソコンが一般家庭に徐々に普及していた頃ですね。
ちなみに私は2000年に、初めてパソコンを買いました。遅い方だったと思います。会社では決められたソフトに数字を打ち込むだけでパソコンを使っていましたが、私生活では必要なかったのです。ようやくパソコンを買っても使い道がありませんでした。
毎日パソコンを立ち上げるようになったのは、友達の紹介でmixiに登録して日記を書くようになってからです。書くことが好きなので、楽しかったな~
それまでは1000円未満だった通信費が膨大な金額になったので、ダイヤル回線からISDNというのに変えたんだった。
携帯はその前から使っていたけど、メールは出来ない機種だったと思います。
この小説では、パソコン通信という情報をやり取りするサービスを軸に物語が展開していきます。いわゆるチャットと言われるサービスです。聞いたことがあるけど、その頃の私には未知の世界でした。
この小説が出た頃には、理解出来ない読者が多かったのではないかな・・・
それが今ではスマホが浸透して、パソコンを使わなくなった若者も多いとか。
20年と少ししかたっていないのに、時代はどんどん変わっていきます。

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by s-jw | 2017-12-13 20:53 | 趣味 | Comments(2)

「晩鐘」

11月19日 佐藤愛子「晩鐘」★★★★☆
家でいろいろ本は読んでいるのですが、感想文となるとなかなか書けません。
久しぶりに大作を読みました。
佐藤愛子さんは御年94歳で、これは2014年に発表したもので、91歳の時の作品となります。今の私の母と同じ歳だ~ 考えられない。母は家では手におえないので、2014年にホームに入居したのです。
母より二歳下の田辺聖子さんだって、最近は小説を書いていないのです。
佐藤愛子さんのこのバイタリテイーはどこから湧いてくるのでしょう。
「晩鐘」は佐藤愛子さんの私小説です。15年間夫婦であった元夫畑中辰彦(小説の中での名前)との出会いから亡くなるまでの約55年間の出来事が綴られています。
この男が、悪気はないけどどうしようもないクズ男で回りを巻き込んで不幸にしていきます。
主人公の藤田杉(佐藤愛子さん)は惚れた弱みとは思えないけど、辰彦がどうしようもないことを起こすたびに怒りながらも心のどこかで面白がってお金を調達するのです。
杉どころか何人も何人も、金持ちからも貧乏人からも性懲りなく借金を繰り返すのです。辰彦付きの二人の運転手のうち、一人は会社倒産後自殺し、もう一人は妻子に内緒で家を抵当に入れて辰彦の会社の返済に当てました。辰彦のために不幸になった人は数知れないのです。
杉だって「債権者から家と家族を守る為」と言われて離婚したら、すぐさま若い女と再婚されて、その後も借金の尻拭いを何度もさせられます。その若い女でさえも夜の仕事で貯めたお金も宝石も貢がされます。家もだったかな・・・
こんな男、そばにいたら不幸になるだけと思っていても、ついついほだされるのでしょうか?
元々は金持ちの実業家の息子なので実家からもさんざん搾り取って、両親が亡くなった時、兄弟から遺産相続させられないと言われながら三千万円もらっても、借金の返済に右から左に消えました。親から搾取したのは、三千万どころではないはず。
面白かったけど、最後まで読んだら疲れました。
佐藤愛子さんは夫との間に一人娘がおられて、二所帯住宅で住んでいるそうです。娘さんが生まれたことは夫に感謝しているとか・・・
畑中辰彦も一つだけでもいいことしたのですね。


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by s-jw | 2017-11-24 12:05 | 趣味 | Comments(2)

「だから荒野」

9月 桐野夏生「だから荒野」★★★★☆

高大がある森ノ宮のキューズモールの中にまちライブラリーがあります。500円で会員登録すると、永遠に本を借りられるのです。
持ち寄りの寄贈された本で成り立っている図書館で、立ち上げの頃は蔵書が少なかったけど、今は多くなりました。その分、本も汚れてはきていますが、文庫本なんかは市立の図書館と違ってきれいな本が多いです。
会員になって初めて借りた小説が「だから荒野」
桐野夏生さんは、好きな作家さんです。特に初期の頃の作品、神取忍をモデルにしたというファイアボールブルースシリーズがお勧めです。
「だから荒野」は、先にNHKドラマを見ました。
その後、原作を読んだと思っていましたが、今回読んでみて初めて読んだのだと気付きました。ドラマは丁寧な脚本だったので、読んだ気でいました。
ドラマで主人公の46歳の主婦の役は鈴木京香さんだったのですが、ドラマを先に見たので、鈴木京香さんは原作のイメージと違って綺麗過ぎます。汚くなくてもいいけど、もっと普通のもっと太り気味の女優さんがいいな~ 
このドラマは2015年1月からの放送だったのですが、今ブレイク中の高橋一生さんが出ていました。私は高橋一生さんが20歳くらいからの時からの隠れファンで、今のブームが嬉しいやら淋しいやら。いつも一癖も二癖もある変な人物の役で、「だから荒野」も怪しげな役でした。それが見事に似合っている人なので、いい人や普通の人の役は似合わない気がします。
高橋一生さんはNHK朝ドラ「わろてんか」にも出ていますが、小林一三さんがモデルだとか。とりあえず、高橋一生さんを朝に見られるのが楽しみです。
話が逸れました。
だから荒野の荒野は、主人公の朋美の家庭のことなんですね。
料理下手で何の取り柄も無いと自分でも思っている朋美は、私達一般人代表の主婦なんだと思う。だから?何なの?と作者は言いたいのではないでしょうか?
最後は荒野であった家庭に帰ってしまうのね。
希望としてはファィアボールシリーズの主人公・火渡抄子のように、家庭に帰らないで荒くれた荒野を一人でどんどん歩いて行ってほしかった~ 
桐野夏生さんの作品はほとんど読んでいるけど、正直、エログロ作品は好きでないので、こういう類の作品をもっともっと読んでみたいです。



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by s-jw | 2017-10-15 19:21 | 趣味 | Comments(2)

「あすなろ三三七拍子」

8月 重松清「あすなろ三三七拍子」上・下 ★★★★★
8月は暇だったので、たくさん本を読んだのだけど感想文を書くとなると、なかなか書けないものです。
高大の夏休みの宿題で、瀬戸内寂聴さんの50年前の小説「夏の終り」の感想文を書くというのがありました。小学生の頃の夏休み最後の一日で片付ける宿題と同じで、やっつけ仕事で書き上げました。
読書感想文なんて、本を読んで感動しない限り書けないと思うのです。
私が20代後半から30代にかけては好きな作家の一人だったと記憶していますが、60代後半ともなると、瀬戸内さんの小説は重くて重くて・・・
それに比べて、重松清さんのこの本は面白かったうえに感動しました。
3年前にドラマ化されたドラマを見ました。
主演は柳葉敏郎で、反町隆史とほんこんが大学時代の同級生。この3人が同じ歳という無理のある設定でした(笑)
何気に録画していて見たら、とても感動するドラマだったのです。
応援団という設定が良くなかったのか視聴率は悪かったそうですが、心を打つドラマだったので原作を読みたくなって、すぐに文庫本を買いました。好きな小説なのでその後も何度か読んでいて、読むたびやはり「良かった~」と思えます。
原作には心に沁みる名言がいっぱい出てきます。
        ************
人間には2種類の人間がいる。人のことを応援できる人間と応援できない人間だ。人の事を応援できない人間は、人からも応援してもらえない。
        ************
臭い言葉かもしれないけど、なんだか泣けてくるのです。
重松清さんの小説はあまり読んでいなかったのですが、「あすなろ三三七拍子」が良かったので、今また図書館で借りてきて読んでいるところです。

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by s-jw | 2017-10-08 17:36 | 趣味 | Comments(0)

「あきない世傳 金と銀(4) 貫流編」

9月10日 高田郁(かおる)「あきない世傳 金と銀 貫流編」★★★★★

8月に購入したけど、大好きな小説なので電車に乗った時だけチビチビチビチビと読みました。
前回は、主人公・幸の夫である天満の呉服問屋「五十鈴屋」の五代目徳兵衛・惣次が商売で不義理をして、行方をくらましたところで終わっていました。
失踪したのは不義理だけが原因ではなく、不義理した相手に「店主の器ではない」と五十鈴屋の奉公人の前で言われたのです。嫁の幸が店主であったならば五十鈴屋のために尽力したい、とも言われて誇り高い惣次は傷つき、商いを放り出して出奔してしまいました。
驚いたことに、五十鈴屋の三男坊・智蔵が六代目徳兵衛を継ぎ、幸と一緒になります。継ぐ人がいないと、五十鈴屋は潰れてしまうのです。幸と一緒にならなくても店は継げますが、この二人、物語の初めからいい感じでしたものね。
夢を追って家を出ていた智蔵が夢破れ五十鈴屋に戻って来ても、自分に商才がないのは本人が一番わかっている。女房は商才があるが、夫の前にしゃしゃり出られない時代なのです。それならば人形遣い(幸)の人形になると、智蔵は決意しました。
いよいよ幸の考えた商売が回っていきます。
ラストの幸のカッコいいことといったら!
ドラマ化したら、幸のイメージは北川景子さんかな・・・
智蔵は、ぜひタカアンドトシのタカさんで。エッ!? それはないって?
私的には、素直で可愛げのある男、智ぼんのイメージはタカさんなんですけど(笑)
次回作がとても楽しみです。

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by s-jw | 2017-09-16 19:00 | 趣味 | Comments(0)

「ナオミとカナコ」

7月23日 奥田英朗「ナオミとカナコ」★★★★☆

去年だったか、広末涼子と内田有紀主演でドラマがありました。ドラマを見て、原作を読みたかったので、図書館で借りて来ました。
内田有紀演じるカナコの夫がDVで、広末涼子演じる親友のナオミと二人で夫を殺すのですが、完全犯罪と思われた犯罪がほころびだらけで、ハラハラさせられました。
前半はキャリアウーマンでしっかり者のナオコが中心で、後半は大人しいと思われるのにいざという時に根性が座っているカナコが中心に話が進みます。
今時、どこにでも防犯カメラがあるよね、と思いながら読んでいました。案の定、防犯カメラから犯罪がばれていきます。追及する夫の妹・陽子(テレビでは姉役で吉田羊)が、映画「ターミネーター2」の殺しても殺しても起き上がってくる殺人者のようで怖かった~
二人の味方となる中国人の李女社長が原作でも面白く、テレビでは演じた高畑淳子の評判が良くていろんな賞を取ったそうです。いわゆる「もうけ役」ですね。
ラストは、二人が逃げ通したのか捕まったのか、原作もテレビもはっきりとはわかりません。
読者としては、犯罪者ではあるが二人に逃げ切って幸せな人生を贈って欲しいと願いました。

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by s-jw | 2017-07-26 22:51 | 趣味 | Comments(0)

「自覚」「臥龍」

6月20日頃 今野敏「自覚」-隠蔽捜査5.5-★★★★☆
電車に乗る時に読もうと買っていた文庫本で、図書館で借りた宮本輝さんの小説より先に読んでいました。
私が大好きな隠蔽捜査シリーズのスピンオフ短編小説集です。
隠蔽捜査では脇役であった人達が、一話ずつ主役になってストーリーが進んでいきます。といっても、目立ってしまうのは、やはり隠蔽捜査シリーズの主人公・大森署署長の竜崎伸也と変わり者の戸高刑事。先日まで放映していた日曜夜九時の「小さな巨人」で変わり者の刑事役をしていた安田顕さんが、隠蔽捜査シリーズで戸高役をやっていたのですが、「小さな巨人」が真似をしたと思ったほど、あれは戸高刑事でした。
7話の短編集ですが、どれをとっても面白くて読み応えがあります。
しかもぐっとくるシーンがあるので、電車の中で読んでいて涙をこらえるのに苦労した作品もありました。

7月1日 今野敏「臥龍」-横浜みなとみらい署暴対係-★★★☆☆
今野敏さんの小説を読みたくて、図書館で借りて来ました。横浜みなとみらい署もシリーズしているそうです。しかしドラマ化や映画化はされてなさそう。時にはユーモアたっぷりの隠蔽捜査シリーズと違って、ちょっとドラマ化がし難そうな内容でした。
今度は安積班シリーズに挑戦しようかと思っています。

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by s-jw | 2017-07-04 19:42 | 趣味 | Comments(2)

「田園発港行き自転車 」

6月25日 宮本輝「田園発港行き自転車 」上・下★★★★☆
図書館へ石原慎太郎の「天才」を返しに行った時、宮本輝さんの新刊があったので借りて来ました。
図書館の返却期間は2週間ですが、延長して読むのに4週間かかりました。
家でしか読まないので、一冊読むのに時間がかかります。
何組かの家族が出てくるのですが、舞台は主に富山県の滑川市と京都の祇園あたりが宮本輝さんの筆によって魅力ある土地に描かれています。
特に、富山の描写が素敵だった。
ゴッホの「星月夜」に似た景色が見れる愛本橋。ホタルイカ漁で見るホタルイカの青白い光。立山連峰の四季折々の風景。一度行ってみたい、と思わせてくれます。
ストーリーは家族同士や友達同士、知り合い同士が複雑に絡み合って一枚の布を紡ぎあげていくよう。宮本輝さんの面目躍如といったところでしょうか。
登場人物に心根の悪い人が出てこないのがいいですね。
小説の中であっても、悪意のある人間にはなるべく出会いたくないものです。

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by s-jw | 2017-06-27 13:28 | 趣味 | Comments(4)

「天才」

5月22日 石原慎太郎「天才」★★★★☆

去年の今頃、図書館に予約していて、忘れた頃に取り置きが出来たとメールが来ました。
田中角栄元首相を描いた、2016年度に一番売れた本だそうです。
田中角栄元首相の「俺」という一人称で書かれた自伝風小説です。
今太閤と呼ばれ頂点へ登りつめた田中角栄元首相は、ロッキード事件をきっかけに首相の座を下りますが、その後も多量の票を集め議員を続けます。
ロッキード事件については、もちろん無罪を主張。
アメリカのメジャーに依らぬ資源外交がアメリカの逆鱗に触れ、アメリカが策を講じてロッキード事件によって田中角栄を葬った、と書いてありました。
真偽のほどはともかく、今は田中角栄のような政治家がいないと嘆く人が大勢いることは確かです。
***数字に強い、駆け引きが上手い、義理人情を欠かさない。それが高等小学校出の男が伸し上がる武器だった・・・***
本の中に出てくる、田中角栄元首相を表現する文章です。
今日も失言した議員のニュースを見ましたが、時代が違うとはいえ、今の政治家とは人間の格が違うのでしょうね。

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by s-jw | 2017-05-22 22:41 | 趣味 | Comments(0)

「あきない世傳 金と銀(3) 奔流編」

3月10日 高田郁(かおる)「あきない世傳 金と銀 奔流編」★★★★★

前回の早瀬編を読んでから半年たちました。半年に一度の出版でも、ストーリーは覚えています。
前回は、天満の呉服問屋「五十鈴屋」の四代目徳兵衛の後添いになった幸(さち)が、四代目に死なれ四代目の弟の惣次が五代目を継ぐ条件に、幸を嫁に欲しいと言ったところで終わっていました。
五代目徳兵衛を継ぐ惣次は商売には敏腕ですが、人の心の機微がわからない冷たい夫です。控えめで可愛い妻は好きですが、自分より頭が良くてアイディア豊富な妻は苦手みたいです。
いるんですよね、こういう男。会社にもいたわ。
女性なんて、口だけでも「有難う。良くやってくれるね。感謝してるよ」と言ってくれるだけでなんぼでも働くのに、自分より前に出る女性には対抗心を持つのです。
幸は賢いので、次回は五代目を掌で上手に転がして、商売をしていくのでしょうか?
それとも五代目に対抗して自分なりの商売を展開するのでしょうか?
本当に、この小説は次が待ち遠しくてなりません。

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by s-jw | 2017-03-21 19:50 | 趣味 | Comments(0)